2025.04.07

生成AIを活用した文書解析(感情分析活用編)

    生成AIを活用した文書解析(感情分析活用編)

    生成AIが急速に普及し、企業の業務改善や効率化を支援するケースが増えてきました。しかし、課題解決を目指す上では生成AI単独で対応するのではなく、生成AIが広く知られる以前から利用されてきた従来の技術を組み合わせることでより効果的な解決に繋がることがあります。実際に弊社が支援したプロジェクトでも、OCR(光学文字認識)と生成AIを組み合わせることで、業務効率が大幅に向上した事例がありました。本コラムでは、前回から引き続き、こうした取り組みから見えてきた利点や具体的な事例についてご紹介していきます。

    生成AIを用いた感情分析

    2023年以降、ChatGPTに代表される生成AIを活用したチャットツールでは、文脈を正しく理解する特性を活かして、感情分析を行うことができるようになっています。

    この特性を活かせば、顧客からのクレーム分析やCRMシステム上の商談管理、ヒヤリハットなどの様々なフィードバック文章を対象に、ポジティブな内容とネガティブな内容を経時的に集計したり、商品や担当者ごとのポジティブ/ネガティブ比率を算出したりすることもできるようになります。

    生成AIを用いた感情分析の利点

    生成AIを用いた感情分析には従来型の感情分析モデルよりも優れた特徴があります。

    従来型の感情分析モデルは文章の内容全体を把握して、文章全体でポジティブかネガティブかの判定を行います。そのため、上記のようなシンプルな文章事例では従来型の感情分析モデルでも同様の結果を導くことはできますが、以下のような事例の場合に、従来の感情分析モデルでは分析が難しいことがあります。

    この文章は、商品そのものは良かったというポジティブな評価と、配送時のトラブルにより不快な思いをしたというネガティブな評価が混在しており、商品と配送サービスという2つの物事を別々に評価していることが分かります。ところが、従来型の感情分析モデルではこれらの内容全体を1つの文章として評価・判定を下すために、最後の「不快でした」の言葉に引き摺られてネガティブな判定を下すことが多いのです。

    一方で、生成AIを用いた感情分析では、複数の対象に対する評価が含まれている場合に分割して記述させることができます。

    この文章を記述内容に合わせて分割して感情分析をするという方法は、事実上、生成AIを活用しないとできない手法です。従来の感情分析の手法でも、事前に文章分割などの前処理を行うことである程度の実装ができる場合もありますが、生成AIほど簡単には実装できません(特に「商品、配送、アフターケア、それぞれ星5、星1、星1です。」のような並列的な表記法の感情分析は生成AIを介さずに実現することは非常に難しいと言えるでしょう)。

    つまり、ここに記載したような事例の感情分析は、生成AIの登場によって大きく変化した領域の1つと言えるでしょう。

    生成AIによる感情分析の課題

    生成AIによる感情分析では、従来では実現が難しいタイプの感情分析も実現できることが分かりました。では、従来型の感情分析技術はもう必要なくなったのでしょうか? もちろん、そんなことはありません。

    例えば以下のような事例を見てみましょう。

    この文章は、ジャイアンツファンの方にとってはポジティブなニュース、タイガースファンにとってはネガティブなニュースです。ところが、この文章を分析させると「ポジティブ」と返ってきました。

    これは生成AIがジャイアンツファンであるということではなく、個々人が受ける感情はその人の立場によって異なるという事前情報が抜け落ちているためです。

    たとえば、同じ質問をする際に、タイガースファンの代弁者という設定を加えてみると、以下のようにタイガースファンの視点での感情分析を行なってくれます。

    つまり、生成AIを使った感情分析を行う際には、その感情を受けるであろう「あなた(ペルソナ)」の情報を事前に詳述する必要があるということです。

    代表的なペルソナを設定できるような分析では、上記のようなペルソナ設定で対応することも可能ですが、より詳細な個別最適化、つまりパーソナライズを考えた場合には、個々の担当者に上記のような詳細なペルソナイメージを記述させることは、あまり現実的ではありません。

    このようなパーソナライズ化を考えた場合には、従来型の感情分析や分類モデルが活躍する場面が出てくるのです。

    情報分析のパーソナライズ

    情報分類の個別化を想定した場合、各担当者に自身のペルソナを詳述してもらう代わりに、各担当者にその文章に対する評価をGoodボタン、Badボタンでフィードバックしてもらい、その記録を集めることで個々人に最適な情報分類を実現する方法が考えられます。この手法は、協調フィルタリングを用いたり、個別に感情分析モデルを構築したりするなど、従来手法を用いて実現されることが多い事例です。

    ただし先述のように、従来の感情分析モデルでは1つの文章内に複数の対象に対する記述がある場合に対応することが難しい部分があります。そのため、別の技術でその部分を補ってあげる必要があります。

    そうです。複数の記述を分割する部分は文脈理解が得意な生成AIで実現できるのです。つまり、この部分で両者を組み合わせる価値があるということです。

    複数の記述を分割する部分までを生成AIに担当させ、その後の感情分析の個別化部分は、個々人のフィードバックから学習した感情分析モデルを適用する。このような段階的な手法を取ることで、対象別であり、なおかつ個々人の立場・状況に合わせた感情分析を実現することが可能になります。

    おわりに

    感情分析というと商品のレビューや顧客からのクレーム分析に活用されるイメージがあるのではないかと思います。もちろん、そのような一般論的な感情分析にも活用できるのですが、「このクレームは商機である!」や「この営業先、アタックすればいけるのでは?」という属人的な判断、分析の根拠をパーソナライズされたモデルとして学習させることで、属人的な判断を共通の知見に変えていく、各担当者の傾向を可視化するなど、弊社では様々な活用方法を常に模索し続けております。

    もし、顧客に限らず、従業員側の含めた生の声の分析のご要望がございましたら、様々な切り口でのご提案をさせて頂きますので、是非、DATAFLUCTまでご連絡ください。