2024.08.28

需要予測における予測精度の評価 〜 基本的なプロセスと考え方を解説!〜

  • 予測AI
需要予測における予測精度の評価 〜 基本的なプロセスと考え方を解説!〜

需要予測はサプライチェーン管理(SCM)において重要であり、生産計画や在庫管理、顧客サービスの最適化などに不可欠な要素です。

需要予測を改善するためには、予測精度の評価も怠れません。

本コラムでは、「需要予測における予測精度の評価」というテーマについて、SCM(サプライチェーンマネジメント)やDXの担当者が、予測精度の評価を行うための基本的な考え方について解説します。

1.予測精度を評価する際のプロセス

まず、予測精度の評価プロセス全体について確認をします。予測精度の評価は以下のプロセスで行われるのが一般的です。

① 適切なデータセットの選択

② 指標等による評価

③ 誤差の原因分析

④ 評価を踏まえたモデル更新

まず最初に、① 適切なデータセットの選択、すなわち「過去に実施したどの予測を評価するべきか」ということを考えたいと思います。

予測精度は、予測モデルが過去の実績データと比較し、どの程度正確に予測できていたかを示す指標です。そのため、過去に予測された値と実際の値との間の差異(誤差)を評価します。

その際、業種および社内の担当者等に応じて予測の必要な期間が異なることを踏まえて、データセットを選択するのが良いでしょう。

いつ頃までの予測が必要かという点について、予測をする企業がビジネス要件に応じて決めるものですが、業界ごとの一般的な予測期間を、以下に例示します。

  • 小売店の発注:数日先
  • 工場における週次生産計画:2〜3週間先
  • 工場における月次生産計画:2〜3カ月先
  • 輸入品の発注:半年先

また製品の特性によっても、評価の対象となる予測精度は変わります。季節の変動を伴う製品であれば、季節ごとの予測精度を評価することが有効です。一方、新製品の販売開始や大規模なマーケティングキャンペーンの実施など、特定のイベントに焦点を当てた予測の評価も可能です。

2.予測精度を評価する際の指標

評価を行う対象の予測が定まれば、「② 指標等による評価」を行うプロセスに入ります。指標による評価には、過去に予測された値と実際の値との間の差異(誤差)を指標化し、その指標の大きさで評価することが一般的です。需要予測の精度を評価する指標は複数ありますが、業界やデータの特徴、評価の目的によって選択することが重要です。

誤差を指標化し評価する方法

「平均誤差」「二乗平方根誤差」「平均絶対誤差」「平均絶対パーセント誤差」の4つを紹介します。

1. 平均誤差(ME: Mean Error)

・概要
予測値と実際の値の差の平均。この値が大きいほど、予測の精度が低い。

・特徴
メリット: 単純で理解しやすい。
デメリット: 正の誤差と負の誤差が相殺されるため、実際の誤差の大きさを把握しにくい。

・適用しやすい分野
どの業界でも使われますが、特にバイアス(系統的な誤差:予測値が実際の値から一貫して偏っていること)の検出に役立ちます。

2. 二乗平方根誤差(RMSE: Root Mean Square Error)

・概要
予測値と実際の値の差の二乗の平均の平方根。これは誤差の大きさを評価するのに使われ、大きな誤差に重みを置きます。

・特徴
メリット: 誤差の大きさにより重みを置くため、大きな外れ値があるときに有効。
デメリット: 単位が原データと異なるため、解釈しにくいことがある。

・適用しやすい分野
不動産の価格予測、気象予報など、大きな誤差が重大な影響を及ぼす分野。

3. 平均絶対誤差(MAE: Mean Absolute Error)

・概要
予測値と実際の値の差の絶対値の平均。予測の平均的な誤差を知ることができる。

・特徴
メリット: 正の誤差と負の誤差が相殺されない。解釈しやすい。
デメリット: 大きな誤差に対して、RMSEほど敏感ではない。

・適用しやすい分野
財務分析、在庫予測など、平均的な誤差を重視する分野。

4. 平均絶対パーセント誤差(MAPE: Mean Absolute Percentage Error)

・概要
予測値と実際の値の差の絶対値を実際の値で割ったものの平均。パーセンテージで表され、誤差の割合を知ることができる。

・特徴
メリット: 結果がパーセンテージでわかりやすい。規模が異なるデータセット間で比較が容易。
デメリット: 実際の値が0に近い場合、誤差が非常に大きくなりやすい。

・適用しやすい分野
売上予測、市場分析など、パーセンテージでの誤差評価が重要な分野。

上記のうち、結果が解釈しやすい「平均絶対パーセント誤差(MAPE)」がサプライチェーンでの需要予測において広く活用されています(※1)。このほか、「対称平均絶対パーセント誤差(調整済み平均絶対パーセント誤差)」が用いられる場合もあります。

3.予測の正確性を直接計算する方法

上記で紹介した指標の他にも、予測がどれだけ正確であるかを直接計算する方法もあります。具体的には、以下の通り説明する「予測的中率」を用います。

予測的中率(Forecast Accuracy Rate)

・概要
 予測的中率は、予測がどれだけ正確であったかをパーセンテージで表したもので、一般に正しい予測ができた個数を全体の予測個数で割って計算する。100%に近いほど、予測が正確である。需要予測の場合、予測が全くぴったりに的中ことは珍しいので、たとえば「2. 予測精度を評価する際の指標」で紹介した各種指標の誤差が、一定の閾値の範囲に収まっている予測数を、全体の予測数で割って計算するなどの工夫が必要である。

・特徴
メリット: パーセンテージで表されるため、直感的に理解しやすい。
デメリット: 予測が過度に外れてしまった場合、実際には大きく外れているにも関わらず、数値上そこまで悪くないように見える場合がある。

・適用しやすい分野
予測の的中率を直接評価したいあらゆる分野に適用可能。
誤差の指標化および予測的中率で、予測精度を数値的に評価した後、「③ 誤差の原因分析」を実施します。  実は、予測精度の評価で最も難しいのは原因分析であり、予測のコンテキストやビジネス上の要件に応じて、評価の数値結果を適切に解釈する必要があります。

次回は、予測精度の評価を行う具体的な事例を取り上げ、データセットや指標の選択・原因分析の考え方などを解説します。

DATAFLUCTのAI自動需要予測「Perswell」で予測精度の評価と向上を実現!

需要予測におけるAI活用は、コスト削減や業務効率化の促進にダイレクトに繋がり、企業の競争力を高める重要なステップとなります。

ただし、その実現にはデータ収集や適切なモデル開発、そして定期的な見直しが必要です。DATAFLUCTのPerswellでは、専門集団が独自のアルゴリズムを用い、最新の機械学習技術や社内外の各種データを活用して高精度な予測を実現し、運用開始後のメンテナンスもサポートします。

AIによる需要予測とはどのようなものか、自社の在庫管理にはどう活かせるのか、どのような他社事例があるのか等にご興味をお持ちの方は、ページ下部「ご相談はこちらから」のボタンよりぜひお気軽にご相談ください。

※1出典:Rob J. Hyndman and Anne B. Koehler Another look at measures of forecast accuracy, International Journal of Forecasting, Volume 22, Issue 4, October–December 2006, Pages 679-688(https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0169207006000239) より