2023.10.09

独自のアルゴリズムで梱包を最小化 年間2,000万円超の配送費削減を見込む

スキンケアを中心とするビューティーブランドであるオルビス株式会社。
物流コストが高騰する中、同社は通販向け出荷ラインにAGV(無人搬送ロボット)、直営店舗・BtoB向け出荷ラインにAMR(自律走行搬送ロボット)を導入するなど、テクノロジーを活用して物流システムの自動化、省人化を進めてきました。

さらなる効率化を目指す中で着目したのは「梱包のサイズダウン」。これまで同社では、商品サイズから梱包サイズを決定するシステムや、現場担当者の判断によって梱包サイズを決定していました。必要サイズよりも大きな梱包材が使われることで、余分な配送費が発生するケースがあったといいます。この課題を解決するために活用したのが、DATAFLUCTの予測・最適化ソリューション「Perswell」です。

今回は「Perswell」を選んだ理由、課題解決までの道のりを、SCM部 ロジスティクス管理グループ グループマネジャー 柳田様に伺いました。

目的

  • 通販発送時の梱包サイズを最小化し、配送コストを削減したい。

課題

  • 既存システムでは商品サイズから梱包サイズを算出しており、必要なサイズより大きな梱包材が選ばれてしまうケースがある。
  • それぞれの商品の詰め方や商品の折り畳みなどの手段を考慮するようなシステムの構築は、内製では技術的に難しい。

効果

  • オルビスのEC商品特性を考慮し、実践可能なサイズダウンの方法を含むモデルを作成。2023年2月から6月にかけて行った実証実験では、注文のうち14.96%で梱包サイズダウンを実現。
  • 2024年本番導入を目指す。年間2,000万円超の配送費削減を見込む。

物流を取り巻く環境は年々厳しくなっており、これまでのような協力会社との交渉によるコスト削減は難しくなる。自分たちでコントロールできる部分を作り、対応していくことが必要だと感じていた。

ー「Perswell」活用のきっかけと、当時の課題について教えてください。

柳田様:これまで当社の通販ではシンプルな計算ロジックを使用し、商品サイズから梱包材のサイズを決定していました。梱包担当者の手元のディスプレイに情報を表示し、担当者はそれを参考に商品を梱包します。ところが詰め方などを考慮したシステムでは無かったため、必要なサイズより大きな梱包となってしまうケースがありました。

一方で、2024年問題を筆頭に物流を取り巻く環境は厳しく、荷主としては配送費が上がることへの対応とドライバーの方の負担を軽減し、出荷の安定を図る必要があります。
その1つの対応策として、より小さいサイズで商品を配送できれば、配送費の削減もでき、輸送効率向上も図れるのではと考え、実現方法を検討してきました。そこで得られた着想がデータサイエンスに強い会社と組んで出荷判定ロジックを見直すことでした。

そこから親会社であるポーラ・オルビスホールディングスのCVC担当に、梱包サイズ判定ロジック変更について相談が出来るパートナーがいないか相談をしたところ、DATAFLUCTを紹介されました。PoC実施前に事前にマスタや配送単価情報、1か月分の出荷データをお渡しし、簡易的な効果検証をしていただきました。その結果から効果が望めそうだと判断できた為、PoCを実施することとしました。

現場の状況や課題を深く理解した提案と、システム担当との密な連携。安心感を持ってプロジェクトを進められる。

ーPoCを通して、DATAFLUCTや「Perswell」の印象はいかがですか。

柳田様:机上で完結させるのではなく、倉庫に足を運んでいただき、作業者が判定結果を受け、どのように商品を詰めているかを確認しながらロジックのブラッシュアップを進めていただきました。また、物流業務にも詳しい方をアサインいただいたことで、我々の抱える課題をより理解いただいた上で進めることが出来ました。

ー今回作成したモデルでは「アパレル商品の折り畳み」などを考慮した独自のアルゴリズムで、梱包最小化を実現しました。

柳田様:化粧品、健康食品、ボディウェアと扱いがあり、1回のご注文は商品、サンプル、販促ペラ含め8点程度、商品の形態も箱やピロー包装、可変するもの、しないもの等、様々な組み合わせが存在します。そちらも考慮したロジックを組んでいただきました。

ープロジェクトの進めやすさはどうでしたか?

柳田様:既存の梱包サイズ判定は複数のシステムがロジックをもっており、システムを改修しようとすると時間も費用も多くかかってしまう為、判定ロジックのみを外出しし、結果が返ってこない場合は既存ロジックをまわすという方法が取れないかと相談をしました。

また、商品のマスタや出荷データについても独特な考慮がされていたため、何をもってサイズを判断すれば良いか分かりづらい点があったかと思います。
弊社システム担当とも密にやり取りをいただき、スピーディーに対応していただいたので安心してプロジェクトを進めることが出来ました。そして本番導入後もしっかり伴走していただけそうだと感じました。

データ活用に課題のある企業でも、投資を抑えたスピーディーなPoCと実装を目指せる。

ー本番導入に向けての期待はいかがですか。

柳田様:弊社側のシステムの都合で本番導入のタイミングを図っている状況ですが、効果が出ることは見えているので、早く実装しコスト削減を図っていきたいです。

システムが判定した結果と実際に作業者が梱包した結果を学習させ、ロジックの精度をさらに向上させたり、蓄積したデータを元に配送箱のサイズ見直しや、商品やオファー品のサイズを変更した際の配送コスト削減シミュレーション等にもトライしていきたいと思っております。

ーどのような企業に「Perswell」やDATAFLUCTとのプロジェクトをおすすめできますか?

柳田様:データの収集・活用が難しい企業や、投資を抑えた上でスピーディーにPoCをおこない、実装を目指したい企業におすすめです。DATAFLUCTは、こちらの課題を現場に寄り添いながら深く理解してくれるのが特徴だと思います。

オルビスのEC商品特性を考慮した、独自の予測モデル

DATAFLUCT エンジニアリングユニット 執行役員 瀬沼:
今回は複数の数学の論文を比較し、それらをアルゴリズムに落とし込んだ上で、システムがその中で最適なものを常にアウトプットするモデルを作成しました。単にきれいな箱だけの計上のものではなく、アパレルのように潰れたり折れたりするものも独自に可能性を計算している点が今回のポイントであり、成果に繋がったと考えています。

今後は、システムが使えるアルゴリズムを増やすなどで精度の向上を目指します。また、ディープラーニングを使えば、アパレルがどう複雑な隙間に入るかを検討したり、交互に組み合わせて入れることを想定するなどより高度な結果を得ることも可能です。DATAFLUCTの「Perswell」チームには物流をバックグラウンドに持つメンバーも複数いるので、今後は物流領域での最適化問題にもっと取り組みたいと思っています。