2023.11.08

衛星画像を利用した森林のCO2吸収ポテンシャルの算出ツール開発事業でNEDOの2023年「SBIR推進プログラム」に採択。森林バイオマス推定の精緻化と低コスト化に向けた研究を開始

データサイエンスで企業と社会の課題を解決する株式会社DATAFLUCT(本社所在地:東京都渋谷区、代表取締役CEO:久米村 隼人、以下「DATAFLUCT」)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」)が公募した2023年度「SBIR推進プログラム」(一気通貫型)に採択されました。

今回、当社は「衛星画像を利用した森林のCO2吸収ポテンシャルの算出ツールの開発」の研究テーマで採択されました。脱炭素の実現に向けて森林由来クレジット活用への期待が高まる中、国内ではまだ事例のない「衛星データを活用したモニタリング」を事業化することで、クレジット申請に向けたバイオマス推定の精緻化と低コスト化を目指します。

背景:豊富な森林と衛星データを活用しきれていない、国内の森林クレジット市場

日本は森林率が約67%と高く、豊富な森林資源を活用したカーボンクレジットの導入は、脱炭素社会の実現に向けた大きなチャンスとなります。クレジットを販売することは、森林を適切に管理するために必要な資金の一助にもなります。しかし、森林クレジットの創出や施業履歴の管理では、対象となる数十ha〜数千haの森林の状態を定期的にモニタリングする必要があります。
この問題の解決策として期待されているのが、衛星データの活用です。衛星データから広範囲の森林を一度にモニタリングすることで、森林の状態と変化を少ない時間とコストで捉えることが可能となります。一方で、人的測量や航空機LiDAR・ドローンによる測量と比べて、その精度に課題があることから、衛星データの利用は、一部のモニタリングを除き、国内の森林クレジットの方法論として認められていないのが現状です。

JAXAベンチャーとして設立された当社は、衛星画像解析などの高度な技術と事業化の実績を持ちます。2019年にガス観測衛星いぶきの時系列データを分析した際に温暖化効果ガスの排出が増えていることが明らかになり、脱炭素社会に向けた行動変容や分析のサービスを開始しました。今回のSBIR推進プログラムへの応募は、衛星を含む新たなデータの活用、及びアルゴリズム開発を通じてカーボンクレジットのエコシステム拡大、ステークホルダー支援ツールの拡充をしたいという背景から実施しました。

「SBIR推進プログラム」について
NEDOが公募した2023年度「SBIR推進プログラム」は、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律の規定により定められた、指定補助金等の交付等に関する指針に基づき、多様化する社会課題の解決に貢献する研究開発型スタートアップ等の研究開発の促進及び成果の円滑な社会実装を目的として、内閣府が司令塔となって、省庁横断的に実施する「日本版SBIR(Small Business Innovation Research)制度」の一翼を担うものです。(NEDO Webサイト:https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100205.html )

DATAFLUCTが行う事業の概要

本事業では(1)森林のCO2吸収ポテンシャルを衛星画像から推定・可視化するツールの開発、(2)森林事業者の有するデータと衛星画像を組み合わせることで高精度なクレジット推定を低コストで実現する手段の構築という2つのテーマについて、フィージビリティスタディを行います。事業化を通じて、森林バイオマス量の推定の精度を維持しつつ、クレジットの申請にかかるコストを低減させることで、市場の間口を広げ、参加者を増やし、活気あるエコシステム作りに貢献します。
また、将来的な人口増加・経済成長が見込まれている南・東南アジア地域が脱炭素への取り組みを進めることは非常に重要です。同地域には森林資源も多く、当社は、本事業で得られた知見を将来的にはアジアのボランタリークレジット市場や地場企業向け脱炭素サービスとして展開することを目指しています。

(1)森林のCO2吸収ポテンシャルを衛星画像から推定・可視化するツールの開発
自治体や企業の所有する森林の地上バイオマス量(AGB)ポテンシャルの簡易推定ができれば、森林クレジット申請に向けた工数の予算化や将来価値の資産が可能になります。こうしたサービスへの需要はあるものの、既存の方法での初期導入コストの高さ、汎用的な評価手法の欠如などの難しさから実施している国内企業はありません。
本事業では、光学衛星とSAR衛星のデータを活用し、AGBを簡易に推定し、可視化する技術に関するフィージビリティスタディを実施します。具体的には、機械学習モデルの改善や衛星データの統計的処理によりAGBの推定精度を向上させ、得られたAGBの値と位置情報データを結びつけた可視化を行います。

(2)森林事業者の有するデータと衛星画像を組み合わせることで高精度なクレジット推定を低コストで実現する手段の構築
多くの森林クレジット申請において、データ整備が不十分な事業者は、現地踏査や高コストな航空機LiDAR観測、継続的な施業管理とモニタリングが必要になります。これにより、森林クレジットの申請とモニタリングのコストが増大しています。
本事業では、森林簿、森林GIS、航空機LiDAR、航空画像と衛星画像を組み合わせることで、低コストでの森林クレジット申請とモニタリングを実現する支援ツールの開発とそのフィージビリティ確認を行います。具体的には、既存の光学画像を用いて森林の施業の有無を確認できるかという検証や、航空機LiDARの3次元点群データを衛星データで補間する手法の検証を行います。

今後の展開

今後は2つの事業について、事業化および市場での提供を目指し、経済産業省・NEDOの支援のもとフィージビリティスタディを進めます。2024年3月までにアルゴリズムを試作し、2024年4月から実証実験を開始することを目指します。

参考情報

(1)森林クレジットに関する衛星データ活用に関心のある企業・自治体様向けのご案内
 DATAFLUCTの衛星データ活用技術を活用したPoCを実施したい企業・自治体を募集しています。当社が提供する「GHG monitoring」は、主な機能として広域のCO2濃度可視化、CO2・CH4等の排出予測、CH4排出源としての水田生育状況モニタリングがあり、森林関連業務の省人化、効率化などにご活用いただけます。

「GHG monitoring」サービス画面イメージ
【衛星データ活用例】
・森林管理の簡素化、DX化
・保有する森林のCO2吸収ポテンシャルの評価、クレジット申請の検討・計画策定
・農業(水田)のメタンガス削減によるクレジット申請の管理精緻化
・その他、衛星画像解析による物体検知や地域モニタリング、まち作りの政策立案

【本件に関するお問い合わせ先】
お問合せフォーム https://datafluct.com/contact
メール info@datafluct.com

(2)セミナー開催情報
DATAFLUCT代表取締役CEO 久米村隼人が登壇し、日本企業がいま知っておくべき「カーボンクレジット」の最新トレンドと事例、カーボンクレジット利活用に貢献するDATAFLUCTの衛星データ分析技術について解説するオンラインセミナーを開催します。


脱炭素の新たな選択肢 カーボンクレジット取引を加速させる「衛星データ活用」の可能性
開催日時:2023年11月15日(水)12:00-13:00
参加条件:無料・事前申込制
参加方法:お申込後にご登録のメールアドレスに視聴URLをお送りいたします。
参加申込フォーム:https://service.datafluct.com/seminar/231115